ネガの街は続く

 梅雨が明けた。わたしが好きだった夏の話をする。

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 田舎の早朝はいい匂いがする。昼間の暑さが一晩かけて静かに冷たくなっている。実家の畳の匂い、土の匂い、裏口に置いてある生野菜の匂い、どうしても嗅ぎたくて無駄に早起きして、畑仕事から戻ってきたおばあちゃんにどうした寝ろって言われるのが好きだった。

 

 

 朝はピアノのある部屋が涼しかった。夏休みは毎朝そこで勉強した。お昼を過ぎると座敷とおばあちゃんの部屋が風がよく通って気持ちよかった。やることがない日は毎日涼しいところを探しながらごろごろしていた。

 

 

 昼間はよく庭に小さいビニールプールを出して遊んだ。あんなに小さいビニールプールなのにみんなで入ってた。水遊びをしたあとはぬるいお風呂に入れられて、そのあと決まって着るワンピースがあった。

 

 わたしは赤いミッキーのワンピース、2つ上のお姉ちゃんは水色の細かいギンガムチェックのワンピース、4つ上のお姉ちゃんは青いヒマワリ模様のワンピース、どれもノースリーブで、ぬるいお風呂に入った体にふれる午後の風がこそばゆかった。わたしは3番目だから、小さいうちからお姉ちゃんの着てる服や使ってるおもちゃはお下がりでもらえるって知ってた、早くヒマワリ模様のワンピースが着たかった。ずっとずっと着たかった。ものすごく着たかったことは覚えてるんだけど、実際に着てた記憶ってないな。ギンガムチェックのワンピースまでは記憶あるんだけど。そういうものなのかしら。

 

 

 小学生になってからは、ラジオ体操が好きだった。なんかラジカセをもって公民館の前にいる町内会長のお兄さんは学校で見るより大人っぽかった、ハンコ持ってるなんて、オトナだ、とか思ってたね。

 

 

 すごく普通の元気な小学生だったから、プールも好きだった。もう毎日行ってた。日に焼けて真っ黒だった。保育園から仲良しだったあやかちゃんと毎日朝9時にプールで待ち合わせした。監視員のバイトのお兄さんと遊ぶのが好きで、みんなで勝手にワッさんとか、リンゴさんとかトカゲさんとか、変なあだ名つけてた(リンゴさんはホッペが真っ赤でリンゴ病みたいだったから、トカゲさんは更衣室にいたトカゲを捕まえてくれたから笑…みたいな。ワッさんは知らない。笑)。勝手に鐘鳴らしたり、ケータイで彼女の写真見たりしてプールに投げられてたな。たのしかった。

 

 

 夕方になると、近所に住んでたホサカさんっておばあちゃんと、うちのおばあちゃんと、近所のワタナベさんっておばあちゃんとか、みんなで夕涼みをした。ちょっと腰掛けれるくらいの土管みたいなのがあって、ぼんやりおばあちゃんたちの話聞いたり、弟とトンボとったり。小学生くらいの時、弟はどこまでもわたしについてきてかわいかった。よく山に入ったり川に入ったり、トンボ見たりネコ見たりしたなあ。今でも一緒に散歩しよ〜って言うとついてきてくれる、かわいいなあ。

 

 

 

  8月のある夜、すごい勢いでお父さんに起こされたことがある。ペルセウス座流星群の極大日で、眠かったらしくて全然覚えていないんだけど、なんだかその年はすごい数が流れてたみたいだった。お父さんは中学校の理科の先生で、星が好きだったから、いつも庭でたくさんの星を教えてもらった。

 

 今でもお盆になるときょうだい4人で揃って庭にレジャーシート敷いて、毛布持って寝っころがって流星群を見る。みんなで同じ流れ星を見つけた時がすごく嬉しい。いつまでできるのかな。今年も晴れるといいな。